2023.5月号vol.98

フッ素の活用で歯を守り続ける

むし歯は、自然に治癒することはありませんが、初期の段階であれば治療の負担を最小限に抑えることができます。また、治療した歯は再びむし歯になってしまうリスクが上がることから、特にむし歯予防への取り組みが大切になります。

むし歯を予防するためには、定期的な歯科メンテナンスのほかに、毎日の正しい歯磨きと、歯と歯の間を衛生的に保つためのフロスや歯間ブラシを使ったセルフケアが大切です。

むし歯予防に最も効果があることがわかっている「フッ素」には、歯を再石灰化することで歯を正常な状態に戻す作用や、抗菌作用のほかに、歯の表面のエナメル質を強化する働きもあります。

毎日の歯磨きでは、フッ素が含まれている歯磨きペーストを活用することで、むし歯予防の効果を期待することができます。

当院の定期メンテナンスでは、お口のクリーニング後に歯磨きペーストよりもフッ素濃度の高いフッ素を歯に塗布することで、むし歯予防に取り組んでいます。

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2023.5月号vol.98

フッ素について新たな推奨

今年の1月に、歯科関連の4つの学会が、フッ素配合歯磨きペーストの新たに推奨する利用方法について発表しました。

フッ素の濃度は「ppm」という単位で示され、これまでは歯が生えてから5歳までは500ppmの使用量でしたが、新たに推奨されたフッ素濃度は1,000ppmとなりました。

また、6歳以上は成人や高齢者と同様の1,500ppmとなりました。

世界歯科医師連盟やWHOなどの国際組織では、以前から年齢に問わず1,000ppm以上のフッ素配合歯磨きペーストの使用を推奨していましたが、日本だけが低い基準で定められていました。

歯磨きペーストをそのまま大量に飲み込むなどの摂取方法は、急性中毒のリスクもあるので注意は必要ですが、フッ素は土壌で育つ野菜や果物、魚介類や海藻類にも含まれており、FAO(食糧農業機構)は、必須栄養素としている安全性の高い成分です。

フッ素濃度が500ppm上がるとむし歯予防効果は6%上昇し、フッ素濃度が1,000ppmの場合のむし歯予防効果は23%だったのに対し、1,500ppmでは29.6%となっています。

新たな推奨フッ素濃度によって、セルフケアで得られる効果が大きくなることを期待しています。

2023.5月号vol.98

マイナンバーカードリーダー導入

皆様は、マイナンバーカードを取得されましたでしょうか?

当院では、マイナンバーカードリーダーを導入しましたが、試行錯誤中のため必要に応じて保険証もお預かりして確認する場合もあります。

マイナンバーカードがあることで、マイナポータルで特定健診情報や薬剤情報、医療費の確認がいつでもできるようになりました。

また、医療費控除の手続きもこれまでより簡易的に出るようにもなります。

もちろん、これまで通りの保険証のみで受診することも可能なので、マイナンバーカードの利用や持ち歩くことに不安がある方もご安心ください。

マイナンバーカードを利用した受診についてなど疑問がある場合は、お気軽に当院スタッフまでお尋ねください。

2023.4月号vol.97

むし歯の大きさと歯の寿命

先月号の月形通信(3月号vol.96)では、隙間にできるむし歯についてお伝えしました。

今月号では、歯を失う原因第2位のむし歯についてお伝えします。

むし歯は、初期の段階であればむし歯菌の部分を軽く削るだけで治療を終えることができます。

むし歯が進行すると、むし歯菌は歯の内部で拡大し、やがて歯の神経の近くまで感染してしまいます。

この時、痛みを感じることが多いですが、更なるむし歯の進行と共に一時的に痛みを感じなくなる場合があります。

神経が感染することで痛みは感じなくなりますが、その後もむし歯菌は歯の内部を壊し続けていきます。

大きなむし歯の場合、むし歯菌に侵食された部分を削り取るため、そのぶん歯を大きく削ることになり歯の寿命は短くなってしまいます。

2023.4月号vol.97

早期発見につながるメンテナンス

むし歯や歯周病などからお口の健康を守るためには、毎日の正しい歯磨きと、歯科医院での定期メンテナンス受診が大切です。

定期メンテナンスでは、専用の器材を使って歯磨きでは取り除くことができないお口の細菌や汚れを除去し、お口の衛生環境を保つだけでなく、様々なお口の問題の予防と早期発見につなげることができます。

お口の健康を守るために大切な定期メンテナンスですが、残念ながら定期メンテナンスで全てを予見できる訳ではありません。

銀歯などの被せ物が外れてしまう時期の想定や、硬いものを噛むことなどによる瞬間的な歯への過度な力をコントロールすることは難しく、歯が欠ける・割れることの予防には限界があります。

また、口腔癌(こうくうがん)については、発症の原因が明確でないため、リスクを抑えるアドバイスはできても、根拠のある予防は難しいと言えます。

しかし、定期メンテナンスを受診されることで、口腔癌の兆候や早期発見は可能になり、専門の大学病院などを紹介することで完治する可能性を上げることができます。

予防は難しくても、早期発見することで守ることができる健康のためにも定期メンテナンスの受診をおすすめします。

2023.4月号vol.97

帯状疱疹と私(40代)

私事ではありますが、お正月が明けた1月下旬に帯状疱疹にかかってしまいました。

帯状疱疹は、水ぼうそう同じように、水痘・帯状疱疹ウイルスを原因として発症する病気で、はじめは皮膚がピリピリするような痛みを感じ、時間の経過とともに赤みや水疱形の水ぶくれなどの皮膚症状が現れる病気です。

私のケースでは、初期症状は左眉付近にピリピリとした痛みと発疹

に加えて、片頭痛のようなチクチクとした痛みがありました。

その後、おでこや目の周りなどにも発疹が出たため、自己診断で帯状疱疹を疑い受診しました。

発症から1ヶ月ほどで日常生活に影響はなくなりましたが、それまでは痛みのため洗顔やシャンプーも優しくゆっくりする生活でした。

成人の90%以上は、帯状疱疹のウイルスが体内に潜伏しており、50歳以上で発症すると、約2割の人は3ヶ月以上痛みが続くと言われています。

50歳以上の方は、ワクチン接種を受けることができますので、かかりつけの病院でご相談されても良いと思います。

2023.3月号vol.96

見守るという診療

当院は、皆様が健康であることで生活の質が向上し、人生がより豊かになる歯科医療を届けていくことを目指し「笑顔になれる歯科医院」というコンセプトを掲げています。

むし歯などの歯科治療では、「歯を削る」「神経を取る」「歯を抜く」などの対症療法が一般的です。

また、多くの歯科治療は、歯の機能を取り戻すための『修復』であり、全ての治療が大切な歯を守ることに繋がるとは言えません。

当院では、歯を削り、抜くことよりも、歯を守るということを最優先に患者様と向き合うことが大切と考え「治療ではなく、見守る」というご提案をする場合もあります。

治療する歯とその前後の歯の状態や患者様のお考えも確認しながら、安易な対症療法ではなく、定期検診などで「症状や状態を見守る」という選択をすることで、経過を見ながら出来る限り歯を削ったりせずに守り続けます。

一度削ってしまった歯は元に戻すことは出来ないため、その一本の歯を守るための最善を目指す歯科医療をお届けします。

2023.3月号vol.96

むし歯細菌が好む隙間

むし歯などの治療のため多くの方が通院されていますが、どのような歯の状態がむし歯リスクを高くしてしまうのかご存知でしょうか?

むし歯の正体は細菌であるため、細菌が繁殖しやすい「隙間」に注意が必要です。

今回は、あまり知られていないむし歯ができやすい2つの歯の隙間をお伝えします。

また、本来歯ぐきに覆われている部分は、硬いエナメル質がないため、歯周病などで歯ぐきが下がることもむし歯リスクを上げてしまいます。

2023.3月号vol.96

雛祭りには、どうして雛人形?

3月の代表的な行事といえば、「雛祭り」ですね。

ご自宅に雛人形を飾るという方もいるかと思いますが、なぜ雛人形を飾るのかご存知でしょうか?

日本では古来より、「形代(かたしろ)」と呼ばれる紙やワラ、木、土などで作られた人形に自分の体をこすりつけ、厄を移して川や海へ流す厄払いが行われていました。

平安時代になり、貴族階級の子ども達の間では、現代のおままごとのような遊びで紙の人形を使った「ひいな遊び」が流行しました。

この「ひいな遊び」と厄払いの「形代」が結びつき、人の身代わりに厄から守ってくれるという男女ペアの紙の人形が誕生し、貴族の間で飾られるようになったそうです。

中国では、3月3日を「上巴(じょうし)の節句」とし、季節が変わるこの時期に邪気を祓う行事があり、遣唐使によって伝えらたこの行事と、貴族の間で飾られるようになった人形が「ひな祭り」という行事になったと言われています。

2023.2月号vol.95

お口の健康を守るためのメンテナンス

皆さんは、「お口のメンテナンス」という言葉を聞いたことはありますか?

メンテナンスを日本語にすると「維持」「持続」「保全」などの意味になり、歯科では、治療ではなく予防という観点からメンテナンスという言葉を使用することがあります。

悪くなったら治す「治療」ではなく、悪くならないための「予防」がお口の健康を守るためには最も大切なことです。

お口のメンテナンスの取り組みには、セルフケアとプロケアの2つがあります。

セルフケアは、ご自宅でする歯磨きなどで、お口の健康を守るための基本となります。

プロケアは、歯科医院で行うもので、メンテナンスの知識と技術を持ったスタッフが、専用の器材を使ってセルフケアでは取り除くことができないお口の細菌や汚れを除去します。

多くの場合、むし歯や歯周病の原因となるのは細菌です。

この細菌を増やさないためのメンテナンスが、お口の健康を持続することに繋がります。

お口の問題と言えば、むし歯や歯周病を思い浮かべる方も多いと思います。

しかし、お口の問題には、噛み合わせが悪い、入れ歯が合わない、親知らずが痛いなど、様々なものがあります。

そして、これらの問題の多くは突発的に起こるのではなく、必ず前兆があり、その前兆に気づくことができず、大きな問題になったときに初めて自覚症状として現れます。

もし、定期的にお口のメンテナンスを受診していれば、問題の原因となる小さな変化に気づくことができ、最小限の処置で問題を未然に解決することができるケースも多くあります。

以前の月形通信でもお伝えした歯の破折は、治療ができず抜歯になってしまうことが多いですが、定期的にメンテナンスを受診されていれば、早い段階で原因を見つけ、破折リスクを下げるための方法をご提案することができます。

日本では、まだ定期メンテナンスは一般的ではありませんが、生涯できるだけ多くの自分自身の歯で生活するためにも大切なお口のメンテナンスです。